ITフリーランスエンジニアの平均月額単価ランキング~2024年の市場動向と2025年の展望~
フリーランスのITエンジニアとしてはたらく方の中には「自分の案件単価が適切なのか」、「単価を上げるためにはどうしたらよいのか」等、気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「HiPro Tech」が集計した案件の単価ランキングを基に、市場での需要が高く、単価が高いフリーランスのITエンジニアの傾向を紹介していきます。このランキングは、2024年の1年間に「HiPro Tech」が受領した案件の月額単価の平均を算出したものです。
HiPro Tech 会員のみ公開案件も多数。
職種編
~企業経営を支えるIT戦略職種に、引き続き需要が高まる~
職種別に見ると、最も高かったのは120万円の「DXコンサルタント」、次いで「ITコンサルタント」(118.2万円)、「プロダクトオーナー/プロダクトマネジャー」(110.4万円)でした。
「DXコンサルタント」(120万円)は、昨年に引き続きデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)推進などのプロジェクトがIT系/非IT系を問わず一般化してきていることから、需要が多く、2023年から約5万円アップしています。
次に高い職種(2位・3位・5位)に見られる通り、ITを使った戦略(システムの構想・導入)やそれを管理できる上流工程の役割へのニーズが高まっています。これは、コロナ禍をきっかけとしたリモートワークやオンライン会議の普及により、非IT企業にもデジタル変革が求められていることが背景にあります。特に、業務効率化や企業成長のためのシステム刷新においては、一般に普及しているプロダクトを社内に取り込む際に、社内側での調整が必須です。自社のIT戦略の全体像から最適化を描けるスキルは特に希少性が高く、需要も高まっています。
4位「機械学習/AIエンジニア」(104.6万円)や7位「データサイエンティスト」(95.8万円)は、企業規模や業種に関係なく、多くの企業が機械学習・AI技術を搭載したプロダクト開発や、顧客情報のビッグデータ解析を通じたビジネスモデルの改善に取り組んでいる職種です。こうした先端IT技術を持つ人材ニーズは非常に高く、人材獲得が難しいため、単価が上昇しています。今後も、自社の業務改善からプロダクトの強化、事業全体の拡大へとつなげるため、AI活用が活発になり、こうしたスキルを持つ人材のニーズが高まると予測されます。例えば、医療・ヘルスケア業界へITサービスを提供している企業では、これまで医療スタッフがシステムに手入力していた作業を音声AI技術を活用した自動入力に置き換え、大幅な業務工数の削減につなげました。今後はプロダクトの独自性・利便性強化のため、高度なスキルを持つ人材補強を行っています。こうした自社のプロダクトの強化の傾向は今後さらに強まると見られます。
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業種編
~非IT企業群の単価上昇 「2025年の崖」問題を目前にビジネスモデル変革が急務に~
業種別で見ると、昨年に続き「コンサルティング、他」が最も高く104.1万円で、前回から約5万円アップしました。これは、既存のITシステムが老朽化し、複雑化・ブラックボックス化することにより、DX推進を妨げ、企業の競争力を低下させる「2025年の崖」問題に対し、多くの企業が危機感を持っていることが背景にあります。自社の業務や成長戦略に最適なシステム刷新を内製で推し進めたい一方で、全社のDX推進ができる人材の確保が難しく、コンサルなどに依頼せざるをえない状況を反映しています。
「金融」は前回より15.7万円アップし、102.1万円の単価となり2位になっています。レガシーシステムの刷新やリプレイスを推進できるPM/PMO・コンサル系の上流案件が多く、業界独自のコンプライアンス・セキュリティに対応できる人材が希少であることから、単価を押し上げたと考えられます。
「医薬品、他」(3位、97.1万円)、「メーカー(素材・化学・食品・化粧品・その他)」(4位、95.1万円)、「人材サービス・アウトソーシング・コールセンター」(5位、91.2万円)も、前回より単価がアップしており、非IT業種においても、DX推進やIT戦略の実行とそのための人材の確保が、企業成長のための急務となっています。例えば、ベビー関連製品の開発・製造・販売などを行うメーカーでは、業務システムのリプレイスを推進しており、「Fit to Standard」と言われる、システムの標準機能に合わせた業務の変革を目指しています。これは、業務内容に合わせてシステム開発や機能変更をするのではなく、標準機能を最大限利用する「SAP S/4HANA Cloud」を導入する方式です。この方式では、追加開発を行わずに、既存の標準機能を組み合わせて使用することで、短期間・低コストでの導入が可能となります。そのため、さまざまな業種で採用されています。こうしたプロジェクトを推進する担当者が市場に不足しているため、各社からの引き合いが多い状況です。
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言語編
~生成AI関連の言語が引き続き高単価を継続~
言語別で見ると、「Typescript」(1位、98.5万円)、「Python」(2位、98.3万円)、「Ruby」(3位、97.5万円)、「Go言語」(4位、95.0万円)といった新しい技術に対応した言語が上位にランクイン。これらの言語は、コード記述が比較的シンプルでわかりやすいことから、保守性が高く運用しやすい特徴があります。そのため、新サービス開発時に採用する企業や、既に使用している言語とリプレイスする企業が増加しており、モダンな言語を扱える人材のニーズも上昇しています。その結果、前回に引き続き高単価を継続していると考えられます。特に「Python」(2位、98.3万円)は、AI/機械学習/データ分析にも使われており、生成AI等の活用を通じて自社のビジネスモデルの革新を推し進めたい企業が積極的に活用しています。このため、需要も増えていると考えられます。
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解説
~自社のIT戦略を描ける人材の需要増。DX推進・生成AI活用があらゆる業種で必須に~
2024年の調査では、昨年に引き続き「生成AI」トレンドの継続とともに、「2025年の崖」と言われる問題に各社が取り組みを強化していることが伺えました。
自社の業務改善・効率化のみならず、プロダクトの強化にも生成AIの技術が使われるようになり、他社との差別化が図られていますが、この動きは今後ますます広がるものと推測されます。
また「2025年の崖」問題への対応として、既存システムの刷新や、自社の成長戦略にあったIT戦略を実行するためには、自社の課題や業務との親和性を鑑みたうえで最適化を描き、オーナーシップを持ってプロジェクトをコントロール・推進できる人材を配置することが不可欠です。
2025年は、社会環境・ビジネス環境の複雑性が増す中でも、自社のビジネスモデル変革や業務改善の戦略を描き、実際にプロジェクトを推進することができる人材の需要がさらに拡大すると考えられます。
【データ算出方法】
2024年1月~12月の間に、「HiPro Tech」に登録された案件データをもとに算出
【データ利用について】
引用・転載の際は、出所がIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech(ハイプロ テック)」であることを明記し、Webメディアの場合は以下のリンクを張ってください。
IT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech(ハイプロ テック)」
https://tech.hipro-job.jp/column/33111
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記事監修

2006年に株式会社インテリジェンス(パーソルキャリア株式会社)へに入社。 アルバイト領域の法人営業や新規求人広告サービスの立ち上げ、転職サービス「doda」の求人広告営業のゼネラルマネジャーを歴任。 2021年11月からIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」に携わり、現在サービス責任者を務める。 「一人ひとりが求めるはたらき方や案件との出会いを増やし、キャリアをデザインできるインフラを提供する」ことを自らのミッションとして掲げ、サービス運営を行う。