フリーランスエンジニアの確定申告、手続き方法や流れなどを解説
ITエンジニアとして独立を考えている多くの人が不安に感じていることが「確定申告」です。
確定申告は、フリーランスや個人事業主、その他条件に当てはまる人が行う必要のある手続きであり、大半の会社員は副業を行っていない限り、確定申告と全く縁がない人も多いでしょう。
このため、ITエンジニアとして企業で働いていた人が独立するときに、確定申告に躓いてしまうことが多いです。
そもそも確定申告がどのようなものか分からない人もいるでしょう。
今回は、確定申告の目的やその内容などを解説します。
(記載内容は、2022年2月時点の情報です。)
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フリーランスITエンジニアの確定申告とは?
確定申告とは、フリーランスや個人事業主が必ず行わなければならない1年間の税務処理です。
この確定申告を元に1年間の所得を確定させ、納税金額を申告する手続きです。
確定申告を行うべき人は、個人事業主やフリーランスなどの企業に所属していない人というのが大半です。
他にも、副業を行っている人、不動産や株、投資などで所得がある人、その他にも確定申告が必要になるケースがあります。
確定申告をする目的
確定申告をする目的は、税金の金額を確定させるためです。
確定申告には「所得(収入-経費)の確定」「所得控除の確定」「納税額の確定」「納税額の申告」の大まかに4つのステップがあります。
つまり、収入から経費を差し引いて合計所得を確定、合計所得から所得控除を差し引いて課税所得を確定、税金額を確定させることが、確定申告の大きな流れです。
個人で報酬を得ているフリーランスITエンジニアは、会社員のように所得や税金を管理してくれる存在(会社)がいないため、自分で行わなければいけません。
確定申告をする際には、控除対象となる項目を確認することで、節税に繋げることもできます。
確定申告はいくらから?
「確定申告はいくらからしないといけないのか」について多くの方が疑問をお持ちだと思いますが、これは計算式によって異なるため、自分の場合どうなるかはしっかりとチェックしておく必要があります。
具体的な計算式を明示します。
① 「所得の合計額」を出す。
② 所得の合計金額から、所得控除(※1)を引き、「課税される所得金額」を出す。
③ 「課税される所得金額×所得税の税率」をし、所得税額を出す。
※1所得控除額:所得控除額は個人所得の合計額によって決まります。
個人所得の合計額 | 控除の金額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
※参考:国税庁 税金の計算をする
確定申告が不要になる場合
年間通して所得が20万円未満であった場合は、確定申告は不要とされています。
※参考:国税庁 税金の計算をする
確定申告をしていない場合どうしたらいいのか
フリーランスが確定申告を行わなかった場合は、脱税となってしまいます。
所得を隠し、納税を怠ったとみなされるでしょう。
納税を怠ると、ペナルティである追徴課税が発生します。
もともと納めるはずだった納税額の40%を加算されるケースもあるため、確定申告をしていない行為は後の自分にもデメリットをもたらします。
もちろん悪質性があると判断された場合、罰はこの限りではありません。
※参考:国税庁 税金の計算をする
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確定申告の対象となるITエンジニアの所得
確定申告の算定基礎となるフリーランスITエンジニアの所得金額は、基本的には得た収入額(売上)から必要な経費や控除などを差し引いたものが、課税の対象となります。
このため、何を経費にカウントし、何が経費としてカウントできないのかは整理する必要があります。
経費としてカウントできるもの
経費になるかどうかの基準は、基本的に業務遂行に必要な支出であるかどうか、売上を得るために直接要したかという点です。
このため、業務を行うためのインターネット契約代や、取引先への交通費などは、経費としてカウントすることが可能です。
名刺作成代、ホームページ作成代なども経費としてカウントできます。
ただし、経費としてカウントが認められるかどうかについては、それぞれの状況によりますので、確認が必要です。
一部経費としてカウントできるもの
自宅兼事務所の場合の電気代、私用と業務用両方に使っている携帯電話・スマートフォンの料金などは、全額を経費にすることはできませんが、一部を経費にすることができます。
この場合、業務のために使用していたと明らかに区分することができ、時間の割合を電気代、携帯電話・スマートフォンの料金にかけることで経費が算出できます。
ただし、経費としてカウントが認められるかどうかについては、それぞれの状況によりますので、確認が必要です。
経費としてカウントできないもの
当然ながら経費としてカウントできないものも存在します。
例えば、専ら自己のための食費は、経費にカウントすることはできません。
事業に関係のない支出や個人事業主と生計を共にする家族や親族の支出なども経費とはできませんが、青色専従者給与や事業専従者控除といった一定の要件を満たすものは経費としてカウントできます。
詳細は、国税局のホームページを参照ください。
青色申告特別控除
青色申告で確定申告を行う人に対して、最高65万円または10万円の所得控除が適用されます。
条件によって、適用される控除金額が変わります。
※参考:国税庁HP 青色申告特別控除
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フリーランスITエンジニアの所得から控除できる可能性があるもの
控除とは、一定金額を所得から差し引くことができる制度です。
控除には、以下のような種類があります。
代表的な控除のみですが紹介します。
基礎控除
確定申告を行う全ての人に適用される控除で、所得金額によって金額は異なります。
所得金額が2,400万円以下は48万円、2,400万円超で2,450万以下は32万円、2,450万円超2,500万円以下は16万円です。
(2,500万円を越える場合は控除金額無し)
医療費控除
申請者と申請者と生計を共にする配偶者や親族のために、その年に支払った医療費が一定額を超える場合(一般的には10万円超)は所得控除を受けることができます。
申請のためには、医療費の領収書などが必要になります。
雑損控除
地震や火事などの災害や盗難被害によって、資産に損害が出てしまった場合、一定金額の所得控除を受けることができます。
雑損控除の対照になる資産の要件に当てはまる必要があります。
生命保険料控除
民間企業の生命保険に加入している人は、その支払額の一部または全部に所得控除が適用されます。
契約内容や支払い金額に応じて、適用条件や控除額も異なります。
扶養控除
扶養している親族がいる場合には、条件に応じて38万円〜75万円の所得が控除されます。
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所得税の課税対象となる所得税率について
所得税
所得税とは、個人の所得に対して課せられる税金です。
課税対象となる所得は、収入から経費や控除などを差し引いた金額です。
日本では累進課税の形式をとっており、課税所得の金額に応じて税率が異なります。
具体的には、以下の通りです。
課税される所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円超330万円以下 | 10% |
330万円超695万円以下 | 20% |
695万円超900万円以下 | 23% |
900万円超1,800万円以下 | 33% |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% |
4,000万円超 | 45% |
※参考:国税庁HP
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確定申告の種類
確定申告の種類は、青色申告と白色申告の2種類です。
それぞれ説明します。
青色申告
青色申告の場合、原則、帳簿を複式簿記により記録しなければなりません。
そのため、簿記の知識がない人にとっては難しく、手間がかかります。
一方でその分所得から最大65万円の控除を受けることが可能になっています。
その他、受けられるメリットも複数あります。
青色申告をする場合は、青色申告をする年の3月15日まで(1月16日以降に事業を開始した場合は事業開始から2カ月以内)に開業届けと青色申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。
<青色申告の場合に必要な提出書類>
・確定申告書B
・青色申告決算書
(貸借対照表)
(損益計算書)
白色申告
白色申告は、青色申告の申請を行っていないフリーランス・個人事業主が行う確定申告です。
青色申告よりも比較的シンプルに確定申告をすることができますが、青色申告ほどの控除やメリットを受けることができません。
<白色申告の場合に必要な提出書類>
・確定申告書B
・収支内訳書
※参考:国税庁 No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
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フリーランスITエンジニアの確定申告の方法・流れ
ここでは、フリーランスITエンジニアの確定申告の方法、流れを紹介します。
準備
確定申告をするためには、自身で確定申告書を作成します。
確定申告書を作成するためには、申告内容によっても変わってきますが、領収書や請求書、控除証明書、マイナンバーカードなどが必要になるため、あらかじめ準備をしておきましょう。
また、青色申告をする場合には、開業届と青色申告承認申請書を事前に税務署へ提出しておく必要があります。
確定申告書の作成
上記の準備が整ったら、確定申告書の作成に取り掛かります。
近年は手書きの入力だけでなく、会計ソフトなどを使用して簡単に申告書を作成しているケースもあるようです。
税金を計算するためには、まず対象となる所得を明らかにしなければなりません。
対象となる所得は「収入-経費-控除額」で算出します。
算出された所得に税率をかけることで、納める必要のある税金額を導くことができます。
税務署への提出
確定申告書の作成が終わったら、それを税務署に提出します。
税務署に提出する方法として3種類紹介します。
直接税務署に行く
提出時に、税務署員に計算ミスがないかなどを確認してもらえるというメリットがあります。
一方で、確定申告ができる時期と時間は限られているため、その時期になると申告手続きに時間がかかるというデメリットもあります。
郵送
郵送することも可能です。
ただし、郵送の場合、通信日付印が提出日とみなされるため、締め切り間際にポストに投函すると確定申告の期限を過ぎてしまう可能性があります。
期限を過ぎてしまうと、申告等によって納める税金のほかに無申告加算税などペナルティが課されてしまう可能性があるため注意が必要です。
e-Tax
昨今は、インターネット上で確定申告できるシステムも存在します。
国税庁が開発するe-Taxを使えば、確定申告の手続き全てをオンラインで完結させることが可能です。
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確定申告について相談したいことがあったら
フリーランスとして事業をはじめたばかりの場合など、確定申告について相談したいケースもあるでしょう。
その場合は、無料で相談できる機関などがあるので、利用してみるのも良いでしょう。
税務署に相談する
税務署に相談することが可能です。
もちろん無料で相談ができます。
法律などの観点からアドバイスをしてもらえるため、間違いが発生しないのがメリットです。
最寄りの税務署に直接行くことも可能ですが、電話でも相談を受けてくれるケースがあります。
必要書類などを踏まえて質問したい場合には、直接足を運んで税務署の職員に確認してもらった方がいいでしょう。
場合によっては、スムーズに進んだり、書類作成を手伝ってもらえたりするケースがあります。
新型コロナウイルス蔓延により直接足を運ぶ人が減ったこともあり、電話がこみ合っている傾向にあります。
特に、確定申告をする時期になると電話が一切繋がらないことも考えられるので、早めのスケジューリングがおすすめです。
税理士事務所に依頼する
税理士に相談することもできます。
税理士に相談する場合には有料になるケースがほとんどです。
相談料が発生することを覚えておきましょう。
しかし、費用が発生する分、節税のアドバイスなどももらうことができます。
確定申告を代行してもらえる上に節税までしてもらえるとは非常に心強い存在です。
所得が多い場合や経費がかさんだ年には相談してみるといいでしょう。
商工会や商工会議所に相談する
商工会とは、町村部に設立されている公的団体のことです。
経営相談などが可能です。
しかし、厳密には、確定申告に関する情報交換は可能ではあるものの、確定申告に関する相談はできません。
理由は、税務相談が税理士の独占業務であるためです。
しかし、商工会議所に招かれた税理士などに相談することは可能です。
市区町村の窓口に行く
市役所や区役所などの役所にも窓口があります。
確定申告時期のみに限定している場合もありますが、窓口の利用もおすすめです。
しかし、税務の専門部署ではないため、質問に対しての答えが返ってこない場合もあります。
事前に電話などで質問事項について回答が得らえるのか確認しておくこともおすすめです。
本を活用する
相談とは少し異なりますが、税務に関する本を活用する方法もあります。
まずは、一冊の確定申告に関する本を読み、概要を掴めるようにするとよいでしょう。
確定申告においては、節税ができる場合もあります。
節税をするにも、知識とコツが必要であるため、知識を蓄えておくことは必要です。
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まとめ
フリーランスになることの大きな不安の一つとして、確定申告があげられることが多いです。
しかし、しっかりと仕組みや時期を把握し、必要な書類を用意しておけば、そこまで難しいものではありません。
税務署に問い合わせれば無料で相談に乗ってくれる上、税理士に相談できるサービスも多く存在しています。
また、会計クラウドソフトなどを使用して簡単に済ませることも可能です。
一方で、確定申告よりも難しいのが、フリーランスのITエンジニアとして案件を獲得し続けることです。
フリーランスは会社に雇われているわけではないため、案件を獲得することが難しいのが現状です。
安定した報酬や案件を獲得するためには、エージェントサービスなどを活用し効率的に案件を獲得できるようにしておくことが安心でしょう。
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記事監修
桐蔭学園小学校・中学校・高校、中央大学卒業後、近藤会計事務所入所。2014年、26歳で税理士登録。2016年、28歳で祖父が開業し、父が承継してきた同事務所を3代目として事業承継。
先代たちが『税理士たるもの納税者のために体を張って頑張りなさい。』という理念の下に約半世紀に渡り事務所を運営。その理念を根幹としつつ、『かゆいところまで手が届く存在に。』『自分にできることは出し惜しみしない。』というエッセンスを加えて税理士業務に日々取り組む。
関わる全ての方々に敬意を持って誠実に対応することを強みとし、クライアントは(JASDAQ)上場企業から中小企業、フリーランス(個人事業主)と多岐に渡る。
事務所URL:http://www.kondo-kaikei.net/