フリーランスエンジニア/デザイナー必見!見積書の作成方法を紹介
フリーランスエンジニアやフリーランスデザイナーは、自身で見積もりを作成する機会が多々あります。
企業に所属していると営業担当が見積もりを作成することが多いですが、フリーランスではそのようなわけにはいきません。
一般的に見積書は、依頼主と作業内容や金額のすり合わせをするために活用します。
そのため見積書の作成を誤ってしまうと、後で大きなトラブルや、損失を生み出す可能性があります。
今回は見積書の作成で失敗しないために、注意点などもまとめて整理していきます。
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見積書の基本知識
見積書とは依頼主の要望を踏まえ、「提供する製品やサービスの金額」「予定納期」「支払条件や期限」などを記載した書類です。
依頼主はこの情報を利用して発注するかを決めたり、他社と比較したりします。
フリーランスエンジニアやデザイナーに限らず仕事を依頼する場合、依頼主は予算を準備しなければなりません。
社内で決済を取るためにも、見積書が利用されます。
なお、見積書の用途は企業によって異なりますが、一般的には以下のような用途で利用されます。
- 提示内容に認識齟齬がないかの確認
- 他社からの提案との比較
- 市場価格との差異の確認
見積書の大きな役割は、認識齟齬がないかの確認をすることです。
金額はもちろん、作業内容や納期、場合によっては契約が結ばれる際の注意事項などを記載します。
また、内容に問題がなかった場合、他社の提案内容と比較に活用されることも多いです。
提示金額が、相場と比べて適切なのか判断するためにも、「相見積もり」が取られ、最終的に発注するかを判断します。
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見積書の基本的な書き方
見積書の記載方法に決まったルールはありません。
上記で説明した通り、契約の内容や金額などが明確でわかりやすく記されていれば、見積書としての意味をなします。
以下では一般的なルールについて解説します。
基本的な見積書のルール
どのような見積書を作成する場合でも、基本的な構成のルールが存在します。
明確に決まってはいませんが、多くの見積書はこのルールに沿って作られています。
見積書の構成は大きく分けて上部・中部・下部の3つに分かれます。
上部 | タイトル、見積もり発行者の情報、依頼主の情報を記載。 |
中部 | 詳細な見積もり内容を記載。一般的には表形式で作業内容と見積金額を列挙。 |
下部 | 見積もりの合計金額を記載。備考を入れる場合は記入。 |
詳しく見ていきましょう。
上部に書くこと
まず上部にはタイトル、見積もり発行者の情報、依頼主の情報を記載します。
タイトルは「見積書」と記載、その左下に依頼主の名称や住所を記載し、右下に自分の住所や氏名を記載します。
ビジネス文書はどのような目的で、誰が誰宛に作成したのかが重要なため、これらの基本情報をわかりやすく記載します。
中部に書くこと
続いて中部には詳細な見積もり内容を記載します。
一般的には表形式で作業内容と見積金額を列挙します。
具体的に提示しなければならない作業内容は、業界や業種によって異なります。
具体的な項目については別途で説明しますが、作業内容と作業時間、またそれに必要な金額を記載しておくと捉えておきましょう。
下部に書くこと
最後に下部は見積もりの合計金額を記載します。
作業金額と消費税込みの両方の金額を記載しておくようにしましょう。
税別や税込の表示がなければ、後からトラブルの原因にもなり得ます。
また、見積書を作成するにあたり、特記事項があればそれも記載します。
特記事項は「備考」として記載しておくのが一般的です。
見積書に記載する項目
実際に見積書を作成するにあたり、記載するべき項目をご説明します。
見積NO.
一般的に見積書には、見積NO.として通し番号を付与します。
フリーランスエンジニアとして活動を長く行うほど、さまざまな見積書を作成する可能性があります。
そのため、後から通し番号で、どの見積書あるのか特定できるようにしておきます。
後から特定できる必要があるため、番号が重ならないように注意が必要です。
1年間だけではなく事業期間全体で重ならないようにしましょう。
見積発行日
同じ依頼主から複数回見積もりを依頼される場合があります。
そのため、発行日を記載して、いつ時点の見積もりであるのか明確にします。
また、見積書には有効期限を設ける場合があります。
この有効期限を明確にするためにも、発行日の記載は必須です。
作業詳細
見積書の中心となる部分です。
どのような作業をして、どの程度金額が発生するのか詳細に記載します。
例えばエンジニアの場合、以下のような作業項目が考えられます。
- 要件定義金額
- 基本・詳細設計金額
- デザイン金額
- 開発(プログラミング)金額
- 検証・テスト金額
- 導入金額
- 機器購入金額
- アプリケーションライセンス金額
受注する案件によって、作業詳細は異なります。
全ての項目が該当するとは限りませんし、ここに記載がない項目が必要になる可能性はあります。
この項目を参考に、必要な項目を洗い出して記載しましょう。
特記事項
見積りを作成するにあたり、特記事項がある場合は記載しておきます。
トラブルを回避するために必要な事項です。
例えば海外製品を利用する場合、「1ドルは108円~110円での想定です」などと記載しておきます。
為替は、時折大きく変動し、トラブルの原因となりやすい部分です。
これは一例ですが「金額」「納期」「責任範囲」など、トラブルになりやすい部分を必要に応じて追記します。
<特記事項に書く例>
- 海外製品についての為替相場の金額変動
- 契約形態
- 納期
- 責任範囲
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見積書が大切な理由
依頼主との認識齟齬を防ぐ
見積書の目的は認識齟齬を防ぐことです。
具体的には「作業内容」「金額」「納期」などでの認識を合わせるために活用されます。
きちんと記載されていないと、想定していない作業まで契約に含まれているなどが発生し、依頼主とのトラブルにもなりかねません。
また、納期と合わせて記載しておきたいのは「支払期日」です。
依頼主によって支払いサイクルが異なりますので、いつまでに支払いを求めるかを明確にしておきます。
作業内容の共有
見積書は具体的な作業内容の情報共有にも利用できます。
必要となる金額を提示すると同時に、作業内容の明細書のような役割を果たします。
そのため、できるだけ詳細に記載することが望ましく、「どのような製品を提供するのか」「どのような作業をするのか」などのイメージが付きやすいように記述をすることが重要です。
条件が改善する可能性も
詳細な見積書を作っておけば、依頼主は作業内容の把握ができ、作業内容の不足なども可視化されます。
もし、記載内容に不足があれば、追加での作業を依頼されるかもしれません。
その場合には、報酬金額も増額される可能性が高まります。
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見積書を書く上での注意点
大まかに作成しない
見積書は契約内容を定義する重要な書類です。
そのため大まかに作成して、認識のズレを生むようなことは避けなければなりません。
大まかな見積書を作ってしまうと、契約段階から認識齟齬が生まれる可能性があります。
認識齟齬を避けるためには、できるだけ詳細に記載することが重要です。
エンジニアの場合は「設計金額」「開発金額」「設定金額」など、工程ごとに分けると良いでしょう。
またそれぞれ「機能」など細かい粒度で記載することも望ましいです。
さらに、打ち合わせなどに関しても、1回あたりの時間と回数を明確に定義しておくことが大切です。
安易な納期設定をしない
納期はできるだけ余裕をもって設定できるよう依頼主と調整をしておきましょう。
依頼主は納期を踏まえて仕事を発注しますので、納期に間に合わない場合はトラブルの原因となります。
フリーランスエンジニアは案件を獲得するために「早く納品できること」をアピールしがちです。
しかし、現実的ではない納期設定は、想定外の作業を許容できなくなってしまいます。
体調が悪くなり作業が遅れてしまう可能性なども含め、多少は余裕をもった納期を提示しましょう。
なるべく早く見積書を提出する
可能な限り見積書は早く提出するようにしましょう。
丁寧に時間をかけて見積りをすることは大切ですが、スピード感も重要です。
依頼主が重要視するのは、作業内容と金額、さらにはスピード感です。
見積書を早く出しておくことで、納期にも余裕が生まれる場合があります。
依頼主の方針によって見積書は、一回しか提出できない場合があります。
ただ、その場合でも早く提出しておいた方が、良い印象を持ってもらえる可能性もあり、早めに対応をしましょう。
相見積りを確認する
依頼主は相見積もりを取っている可能性があります。
そのため、競合相手がいるかどうか確認しておきましょう。
依頼主に丁寧なヒアリングをすれば、相見積もりに関する情報を聞き出せる可能性があります。
何かしらの競合の情報を得られれば、自分の見積もりに反映させることが可能です。
他社の見積もりに関する情報は、公開していない場合も多いです。
情報が手に入らない場合は仕方がありませんが、できるだけ手に入れて反映させるように意識してみましょう。
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見積書作成に契約形態は関係する?
見積書は契約前に出すことも多いでしょう。
業務委託契約を結ぶ前に、見積書を出さないといけないケースもあります。
そういった際は、見積書に何を記載する必要があるのでしょうか。
見積書に契約形態を記入する必要はない
見積書に契約形態を記入する必要はありません。
このため、契約の形態には言及していなくとも、見積書は効力があります。
準委任契約の場合
見積書に契約形態を記入する必要性はなくとも、記入しておいた方が親切であったり、のちのちの認識の相違が生まれにくかったりします。
特に契約前は、「準委任契約の場合はこの金額で見積もりを出したいが、請負契約であれば、この金額では出したくない」というケースもなくはありません。
この場合には、契約形態を見積書に明記しておいた方が良いと言えます。
準委任契約の場合は、一人日がいくらの計算で、この金額になっているのか、という工数による計算を明記しておくのがおすすめです。
おすすめの記載例:
項目 | 稼働 | 単位 | 単価 | 合計 |
○○制作 | 3.0 | 人日 | 50,000 | 150,000 |
備考欄に準委任契約であることを一言添えてもいいでしょう。
請負契約の場合
請負契約の場合も見積書作成の流れは同じです。
準委任契約とは異なり、納品物に対して責任を負うことになるため、例えば「『カート機能搭載』が何を指すのか」といった、完成の定義を両者で認識揃えしておく必要があります。
プロジェクトに携わる際に、「全体管理費」「ディレクション費」などと入れている場合は要注意です。
「全体管理」ではどういった業務が発生するのか、どこまでを対応するのか、契約前に定めることが重要ですが、場合によっては見積もり書に記載しておく必要があるでしょう。
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見積書に源泉徴収を記載すべきか?
源泉徴収とは
フリーランスエンジニアやフリーランスデザイナーが悩むべき項目の一つに源泉徴収があります。
源泉徴収とは、特定の所得において、報酬を支払う側が所得税を回収して納める制度のことです。
フリーランスエンジニアやフリーランスデザイナーが仕事をする場合、以下の項目である場合は、源泉徴収が必要です。
- 原稿料
- 講演料
- デザイン料
このため、システム開発などの業務は源泉徴収をする必要がないものの、以下のケースなどでは源泉徴収をする必要があります。
- 自身はフリーランスエンジニアだが、インハウス支援のために、とあるプロジェクトのQA業務について、クライアント社内向けに講演という形で行った。
- 自身はフリーランスデザイナーだが、Webサイトを広告で使用する際のバナーを制作した。
源泉徴収は見積書に記載するべきか?
源泉徴収については以下の対応をとりましょう。
- 見積書・・・源泉徴収は記載しない。
- 請求書・・・源泉徴収を記載する。
見積書は、業務をいくらで引き受けるのかを明示するものであるため、源泉徴収を表記する必要はありません。
表記しないのが一般的です。
一方、請求書では、源泉徴収額を明記する方が望ましいです。
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まとめ
見積書の書き方、内容により案件の受注確度が変わるケースが多々あります。
また、案件を受注した後にトラブルが発生しないかにも関わってきます。
つまり、見積書のクオリティは自分にプラスにもマイナスにも影響する可能性があるのです。
見積書の作成は気を引き締めて望みましょう。
今回の記事のまとめです。
・見積書の作成に決まったルールはない。
ただし、多くの企業で採用されているルールはあるので、それを踏まえた書き方にすると良い。
- 「見積NO.」「見積発行日」「作業詳細」「特記事項」は必須項目であるため、しっかりと記載する。
- 契約形態について明記する必要はないが、準委任契約を想定する場合は、工数や稼働の数字をしっかりと記載し、請負契約を想定する場合には、納品の定義をクライアントと目線合わせしておくと良い。
なお、「HiPro Tech」は、フリーランスITエンジニア専門のエージェントで、フリーランスとして案件の獲得し、見積書を作成する際のサポートも行っています。
また、依頼主との契約内容に関して、代理で交渉を行いますので、認識の齟齬なく安心して案件に参画する可能性を高めることが可能です。
企業に対しての営業活動や面談前後でのフォローもしており、効率良く案件を獲得することにも繋がり、エンジニアとしての通常業務にも集中しやすくなります。
フリーランスエンジニアとしての活動を希望しているようであれば、無料登録してみてください。
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記事監修
2006年に株式会社インテリジェンス(パーソルキャリア株式会社)へに入社。 アルバイト領域の法人営業や新規求人広告サービスの立ち上げ、転職サービス「doda」の求人広告営業のゼネラルマネジャーを歴任。 2021年11月からIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」に携わり、現在サービス責任者を務める。 「一人ひとりが求めるはたらき方や案件との出会いを増やし、キャリアをデザインできるインフラを提供する」ことを自らのミッションとして掲げ、サービス運営を行う。