ITストラテジスト試験(ST)の難易度や合格率、必要な勉強時間はどのくらい?
ITストラテジストとは、システム開発の上流で活躍する人のことを指すことが一般的であり、企業がIT技術を活用する際に、事業計画を元にIT戦略を提案、実行する役割を担います。
そんなITストラテジストには、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施する国家試験があり、合格すると、客観的に知識や技術力を示すことに繋がります。
本記事では、「ITストラテジスト試験(ST) ※以下ITストラテジスト試験」難易度や合格率、必要な勉強時間の目安を紹介します。
なぜ市場価値が高まり、今後も将来性があるのかにも触れますので、ぜひ最後までご一読ください。
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ITストラテジスト試験(ST)の合格率
ITストラテジスト試験の合格率は、令和6年度春期を参考にすると15.8%です。
応募者数 | 受験者数 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|---|
7,486 人 | 5,327 人 | 842 人 | 15.8% |
受験資格は必要ないものの、合格率は例年14〜15%前後で推移することが多く、その難易度は高いことがわかります。
※出典:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「令和6年度春期情報処理技術者試験(応用情報技術者試験、高度試験)及び情報処理安全確保支援士試験の合格発表について」
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ITストラテジスト試験(ST)の難易度
ITストラテジスト試験は、以下4種類をすべて受ける必要があるため、それぞれの難易度を紹介します。
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その他の資格の難易度について知りたい方は以下の記事も参考にしてみて下さい。
関連記事:デジタル人材に必要な資格を難易度別に紹介!必要なスキルやなる方法も |
午前Ⅰ
ITストラテジスト試験の午前Ⅰは、同日の応用情報技術者試験の午前Ⅰと共通の問題が出題されます。
出題形式は4択の選択問題から解答を選ぶもので、問題数は30問、試験時間は50分です。
試験通過のために必要な点数は60点以上ですが、令和6年春期の試験での得点者がおよそ6割であったことを考えると、難易度はやや高いといえます。
文章問題も出題される傾向があるため、深い専門性を問われない試験であったとしても、十分に対策しましょう。
午前Ⅱ
ITストラテジスト試験の午前Ⅱは、専門知識問題として基礎から応用までの範囲が出題されます。
問題数は25問、試験時間は40分と短いですが、以下の分野の問題が出題されます。
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範囲は午前Ⅰと重なりますが、内容が高度になるため、難易度が高くなります。
新傾向問題が出題されやすいため難易度は上がりますが、過去問を学習し、関連用語の知識を補充しておけば、得点できる可能性があります。
午後Ⅰ
ITストラテジスト試験の午後Ⅰは、記述式の問題が出題され、主に事例について回答します。
問題は3問出題され、2問を選択して解答、試験時間は90分間で、DX(デジタルトランスフォーメーション)の事例やAIを取り上げた事例などが主な内容です。
各事例に対して何ができるのか、客観的事実をありのままに書く形で回答します。
過去にAIについての事例があったことを踏まえて周辺知識を押さえておきたい一方で、やや難易度の高いビジネス企画に対しての出題もあるため、難易度は低くないでしょう。
午後Ⅱ
ITストラテジスト試験の午後Ⅱは、論述問題で論理的な思考が求められます。
問題は2問出題され、1問を選択して解答、試験時間は120分で、DXを取り上げた問題まで取り扱われる傾向があり、的確な文章で論述する必要があります。
午後Ⅱでは、コンサルタントとしての解決策を論述することから、論理的な思考パターンと説明力(プレゼン力)を鍛えておかなくてはその難易度の高さに苦労するかもしれません。
日ごろから事例と向き合ってみたり、幅広い選択肢を用意できるよう知識をつけたりする必要があるでしょう。
※参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 試験要綱Ver.5.3
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ITストラテジスト試験(ST)に受かるための勉強時間
ITストラテジスト試験を受けるための勉強時間は、技術や知識の取得レベルによって変わりますが、150〜200時間が目安といわれています。
その難易度の高さから、IT業界に3〜10年ほど勤めている人であっても同様の時間がかかると考えられます。
IT知識に不安があったり、勉強が苦手だったりする場合は、200時間を目安としてやや多めに学習しておくと良いでしょう。
ITストラテジスト試験は午前・午後を合わせると300分間が試験時間のため、予習・復習は必要不可欠です。
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ITストラテジスト試験(ST)は独学で目指せる?
結論から述べると、独学でITストラテジスト試験合格を目指すことは可能でしょう。
参考書や問題集が多く販売されており、現在はインターネット上でITストラテジスト試験関する情報が豊富に公開されています。
しかし、独学で合格を目指すにはいくつかの注意点があるため、メリットとデメリットを理解し、最適な学習方法を見極めることが大切です。
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ITストラテジスト試験(ST)を独学で勉強するメリット・デメリット
独学でITストラテジスト試験への合格を目指すメリットとデメリットを以下の表にまとめました。
学習方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
独学で勉強する | ・コストがかからない ・場所や時間に制限がない |
・論述形式の対策が難しい ・質問ができない ・学習スケジュールを自分で立てる必要がある |
スクールに通う | ・論述形式の対策がしやすい ・質問ができる ・カリキュラムが組まれている |
・コストがかかる ・場所や時間に制限がある |
近年は場所を問わずに学習できる「オンラインスクール」なども人気ですが、スクールにかかるコストを懸念する人が少なくありません。
では、効率的に独学を進めるためにはどうすればいいのでしょうか?
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独学で勉強する際の4つのポイント
ここでは、独学で勉強する際のポイントを紹介します。
学習スケジュールを立てる
独学での学習を成功させるためには、学習スケジュールを立てることが大切です。
知識の習得期間や演習の開始時期などを考慮し、試験日から逆算して計画を立てていきましょう。
試験範囲は幅広いので、時間に余裕を持ってスケジュールを組むことをおすすめします。
「◯月◯日までにシステム戦略の範囲を終わらす」など、目標を細分化するのも効果的でしょう。
過去問の分析や対策を徹底する
独学をする方は、過去問の分析や対策を実施することで合格率を高められる可能性があります。
過去問の分析や対策を行うことで、試験の特性や出題の傾向を理解できるためです。
例えば、どの分野の問題が頻出されているか、重要なキーワードはあるかなどを分析していきましょう。
参考書の中には出題傾向について説明されているものもあるため、そういったタイプの参考書を選ぶと良いでしょう。
筆記試験に慣れる
ITストラテジスト試験は記述式、論述式が採用されているため、そのスタイルに慣れることも重要でしょう。
ただ、知識をインプットしただけでアウトプットの練習ができていないと、点数を獲得できない可能性があります。
公式サイトで過去問が公開されているほか、演習問題をまとめた書籍などを活用して、アウトプットの練習を行なっていきましょう。
独学にこだわりすぎない
独学で合格を目指すと一度決めた場合でも、独学にこだわらないことがポイントです。
必要に応じてスクールを活用することで、効率的に学習を進められますし、合格の可能性も高められるでしょう。
また、独学に頼り過ぎてしまうと、知識が偏る可能性があるだけでなく、論文のクセに気付けない可能性があります。
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ITストラテジスト試験(ST)において得点を伸ばす勉強方法
ITストラテジスト試験において、得点を伸ばす方法を以下の4つにわけて紹介します。
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午前Ⅰ
ITストラテジスト試験の午前Ⅰは、基礎問題が出題されます。
得点を伸ばす方法としては、基本的な用語を覚えて内容を深く理解することが大切です。
また、過去問から出題される割合が7程度であったことを踏まえると、問題演習を繰り返して完璧になるまで覚えておくことも一つの方法です。
午前Ⅱ
ITストラテジスト試験の午前Ⅱは、用語の意味や概念などを理解しているかを答える問題が出題されます。
重点出題分野は、システム戦略、システム企画、経営戦略マネジメント、ビジネスインダストリ、企業活動、セキュリティの6分野です。
基本的な用語を覚えて意味を理解しておくと、得点がとりやすくなるでしょう。
基礎を完璧にする形で覚えながらも、幅広く学ぶ必要があるでしょう。
午後Ⅰ
ITストラテジスト試験の午後Ⅰは、経営問題とその対策について出題されます。
DXやAIに関連させた事例問題なども出題されます。
得点率を高めるためにも、解答は文字数制限以内で筋道を立てて説明できるようにすることが大切です。
また、出題される事例の問題は状況や問題点を文章から読み解く力も求められるため、長文読解の能力を高めておくと良いでしょう。
午後Ⅱ
ITストラテジスト試験の午後Ⅱは、企画力や提案力を試される問題が出題されます。
得点力を高めるために、論理的な思考で客観的な意見を提示する意識を持って解答する癖をつけましょう。
2つの問題から1つを選び、小論文を書く形であることから、過去問の解答を参考により良い書き方を覚えておくのもおすすめです。
※参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 :「令和6年度 春期 ITストラテジスト試験 解答例
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ITストラテジスト試験(ST)は「役に立たない」と言われる理由
ITストラテジスト試験合格するメリットはさまざまです。
しかし、一部ではITストラテジスト試験は役に立たないという意見も見受けられます。
以下でその理由を確認していきましょう。
資格がなくてもITストラテジストとしてはたらける
ITストラテジストは資格取得必須の職種ではないことから、ITストラテジストの資格は意味がないと言われることがあります。
確かにITストラテジストとしての実務経験も重要ですが、自分のスキルや知識を客観的に証明するためにITストラテジスト試験は有効でしょう。
特に転職や昇進などのシーンで評価されやすいため、キャリアアップを考えている方は取得しておくと良いでしょう。
資格よりも実務経験を重視されることが多い
ITストラテジストは資格よりも実務経験が重視され、資格取得の重要性が軽視されることがあります。
しかし、新人がスキルアップするために資格を取得したり、体系的な知識を得たりするために資格勉強に取り組んだりするのは意味のあることだといえるでしょう。
特にIT戦略の立案などを行う際は、専門的な知識が求められます。
中には、ITストラテジストの資格取得は数年分の実務経験に相当するという声もあるため、資格取得が意味ないという可能性は低いでしょう。
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ITストラテジスト試験(ST)の資格取得のメリットを紹介
ITストラテジストの資格を取得するメリットは以下の取りです。
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このようにITストラテジストの資格を取得することで、多くのメリットを得ることが可能でしょう。
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ITストラテジスト試験(ST)の市場価値
ITストラテジスト試験の市場価値は、以下に挙げた3つの理由によって、IT業界の中でも高いとされています。
そのため、資格取得を目指す人は数多くいます。
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全般的なIT系の知識が身に付いていると証明できる
ITストラテジスト試験は、IT知識全般を保有していなければ合格できないほど難易度が高いことで知られています。
なぜなら、専門家として事業戦略を考える立場にあるため、開発・設計に関して全般的な知識が求められるからです。
また、知識を用いて課題をどのように解決するかまで考え出し、提案する必要がありますから、専門的な知識を有していることを証明することにも繋がります。
関連記事:Goエンジニアの仕事内容は?将来性や身に付けるべきスキルについて解説! |
案件獲得や転職で武器になる
ITストラテジスト試験は国家資格として認められており、フリーランスで案件を獲得する際や、転職で自らの知識やスキルのアピールをする材料の1つになります。
本格的なIT知識を持つことを証明でき、約5年の実務経験と同等の価値と考えられることもあるからです。
関連記事:プロジェクトマネージャー(PM)にオススメの資格5選!必要なスキル・年収なども紹介 |
市場価値が高いIT人材であることを示せる
ITストラテジスト試験へ合格していると、幅広いIT知識を持ち合わせている証明となり、結果的に企業の方向性を決めるポジションにも携われることがあるといった事例を考えると、市場価値が高いIT人材であること示せると言えるでしょう。
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フリーランスで経験を積みながら資格取得を目指す
フリーランスとしての経験を積みながら、資格取得を目指している方も少なくありません。
エンジニアとして実務経験がある方は、フリーランスで対応できる業務範囲を広げられる可能性があります。
例えば、フリーランスの仕事で上流工程に携わることで、資格取得に重要な経験を積めるでしょう。
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ITストラテジストは、エンジニアとしてはたらく多くの人が自らの保有する知識・スキルを証明するために受けるテストです。
その市場価値は高く、IT技術の普及に合わせて多くの企業が求める人材となるでしょう。
また、ITストラテジスト試験は合格率が15%前後と難易度が高いため、取得しておくとフリーランスとして案件を獲得する際のアピール材料となります。
保有する技術や知識、資格を活かし、フリーランスとして活動したいとお考えであれば、IT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」をご利用ください。
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記事監修

2006年に株式会社インテリジェンス(パーソルキャリア株式会社)へに入社。 アルバイト領域の法人営業や新規求人広告サービスの立ち上げ、転職サービス「doda」の求人広告営業のゼネラルマネジャーを歴任。 2021年11月からIT・テクノロジー領域特化型エージェントサービス「HiPro Tech」に携わり、現在サービス責任者を務める。 「一人ひとりが求めるはたらき方や案件との出会いを増やし、キャリアをデザインできるインフラを提供する」ことを自らのミッションとして掲げ、サービス運営を行う。